ドクターMの「美と健康のかかりつけ医」ブログ

2023.08.15

嵐のお盆休み、脳内充電中。

お盆です。

例年のごとく、クリニックは夏の長期休暇に入っております。

普段は一般診療と美容皮膚科診療で週6日労働ですので、お盆と正月はそれぞれ10日間ぐらい休暇をとらせていただいております。

患者さんからは、「先生、長いこと休みますなー」と毎年のように言われますが、普段は働きすぎであることは間違いないので、この長期休暇は年に2回のルーティンにしています。

さて、今年の夏休みは、ワンコをつれて軽井沢旅行!と意気込んでいましたが、ご存じの通り台風7号が日本列島を縦断するとの情報のため、予約していた宿もキャンセル料半額はらってキャンセルし、自宅で晴れた空をみながら、「これで台風がしょぼかったら、へこむよな~」と遠い目でつぶやいておりました。

本日15日に、予定より西に若干それながら、無事(?)台風は上陸しております。

2018年のあのひどいヤツに比べると、かなりマシなようですが、西日本ではそれ相応の勢いです。

ただし、東日本はそれほどでも・・・ううう。

 

こんな日は、いつもできないことをやりましょう。

読書に勉強、脳内充電です。

まず読書。

休み当初から読み始めていた「What Doctors Feel」(邦題:医師の感情~平静の心がゆれるとき)。

アメリカ人のダニエル・オーフリという開業医でエッセイストの方の作品です。

 

彼女は、私より2個上の58歳で、ほぼ同世代です。

 

彼女がレジデント(日本でいう研修医)から現在にいたるまでの体験をもとに、「医師は、多忙な日常診療の中で、どのような心理状態で過ごしているのか」をリアルな実例をもとに赤裸々にしています。

日本とアメリカでは医療制度も大きく異なりますが、人と病気を扱うという意味では全く同じであり、この本の中の登場人物の心理状態というのは、まさしく私自身が体験し実感してきたものとほぼリンクしていました。

医師とてやはり人間であり、様々な感情の中で揺れ動き、時には判断を誤り、恐怖に押しつぶされそうになります。

ですが、周囲からは迅速で正確な判断を迫られますので、自らを鼓舞して前に進むしか他に道はありません。

完全無欠で完璧を求められますから、そのストレスは相当なものになります。

強く自己肯定をするか、負の意識は忘却するかしないと、簡単に心を病んでしまうかもしれません。

 

私は現在、内科医・小児科医とともに、皮膚科・美容皮膚科医という4足のわらじを履いています。

クリニックの開業医ですから、勤務医時代(救急医と循環器内科医)とは大きく違って、人の生死に関与することはほとんどなくなりました。

ただし、一般診療には、風邪などの急性疾患はもとより、不思議で多彩な症状を訴える患者さんが少なからずいらっしゃいます。

しかし、現実には、見逃してはいけない病気の人はそのうち極々わずかです。

それは、山のように積み上げられた木片のなかに混ざっている「針」を見つけ出す作業に例えることができます。

ときにはその針は、ぱっと見には「針のようなもの」にしか見えず、見逃してしまうこともあるかもしれません。

その「針」を漏らさず見つけだし、専門医に紹介する役目を担ってるという意味では、末端の開業医とは言え、かなりの責任があります。

 

真面目な医師であればあるほど、日々の診療の中で神経をすり減らし、ノーエラーで試合を終えるべく、アドレナリンを放出しまくります。

私はガチガチの真面目医師ではありませんが、それでも自分の判断にミスはないか?、患者さんにベストな医療を提供できているか?と思案しながら診療を続けています。

しかしながら、心と体が疲れてくると、最高のパフォーマンスができてないことに気づきます。

それでも、容赦なく患者さんはやってくるし、日々の施術も続きます。

「いったい、何歳までこの仕事をつづけられるのだろうか?」

寝る前に、弱気な自分がつぶやきます。

そして、次の朝、目覚ましテレビの軽部アナの声を聞きながら、バナナとヨーグルトとコーヒーでリセットされた頭と体で、クリニックに向かう車のステアリングを握っています。

クリニックにつく頃には、弱気な自分は消えさり、いつものようにパワー全開で、「さあ、今日の朝礼では何を言おうか!?」とまたアドレナリンを出す自分がいます。

夜の9時、カスカス、ヘトヘトになったカラダで、またステアリングを握り帰途につく。。。。

有限ではありますが、無限のように思えるループは続きます。

幸いにも、過酷な労働に見合った報酬は皆様からいただいておりますので、私の家族は経済的に路頭に迷うことなく日々を生きております。

ですが、私のカラダはなんとなく日々すり減っていくような気もしています。

今年8月で56歳になりましたので、気分的にもなんとなく60歳のほうに近づいているようで・・・・

 

 

とは言え、私は「何でも屋の開業医」という職業が、心の底から好きなのでそう簡単にはやめません。

まだまだ学ぶことはあります。

特に美容皮膚科の世界は、まだまだ発展途上です。

偽物と本物が玉石混合している世界でもあります。

その中で、「美容は医療」との信念のもと、日々知識のアップデートに努めていかなければなりません。

 

「いつ死ぬかわからないがいつも目的のため坂道を登っていく 死ぬときはたとえどぶの中でも前のめりに死にたい」

天才でもなく、秀才でもなく、凡人である私は、弱い心に鞭打ちながら、不器用にも着実に前に進んでいきます。

56歳の誕生日 愛犬しんばと共に